GO斉藤のIR背負い投げ

GO齋藤のIR背負い投げVol.27 「改めて『IRの本質』を考えてみた」

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 今年も暑い夏が続いてはいるものの、台風が通過するたびに秋の気配も感じる今日この頃、背負い投げファンの皆様、いかがお過ごしでしょうか。弊社はと言えば、7月4日に上場来高値を記録した後は、株価がダラダラと推移していることもあり、機関投資家を中心にファンダメンタルズの説明に走り回っておりました。外国人持ち株比率が40%を超えているので、アジア、欧州、北米にも弾丸で行って来ました。おかげでジメジメした日本の夏をほぼ感じることなく、秋を迎えることができそうです。9月に入ると証券会社各社が都内で国内外の機関投資家を集めたカンファレンスを開催しますので、そこでも弊社の長期ヴィジョンをしっかりと説明していきたいなと思っております。

 海外に出ることも多いため、弊社を取材したいという方全ての要望に対応できていないことは本当に心苦しい限りです。四半期決算のため、沈黙期間を差し引くと実質IR対応可能日数は3ヶ月のうち30日程度しかありません。朝9時から17時(ろうじろうを導入している弊社ですが、IRは遅い時間まで対応しております)まで、全て幕張でインターバルなしで対応し、しかも他の業務は全くやらない若しくは残業で対応したとしても、1日8コマしか入れられません。実際には「オフィスまで来てくれ」という要求もあります。IR専業という訳にもいきませんので、実態としては各四半期100件程度でフル稼働ではないでしょうか。弊社の場合、2016年3月期のIR件数がのべ398件(スモールミーティングも相当件数行っているので、お会いさせて頂いた投資家数は更に多くなります)でしたので、100%稼動です。そのため、頂いた取材リクエストの一部はお断りしている状況になっており、投資家様からは批判が出ているとも聞いております。お許し下さい。なお、このような状況なので、前日にキャンセルとかされると悲しくなります。お気をつけ下さい。

 本題とはだいぶずれてしまいました。この夏、日本のIR関係者を震撼させた出来事と言えば、米グラウカス・リサーチ・ファンドによる伊藤忠の空売りレポートではないでしょうか。この場で詳細について触れることは避けますが、IR担当者としては「事前にディスカッションできなかったのか?」「事前にコンタクトがなかったとしても、事後的にディスカッションすることはできないのか?」などなど気になることばかりです。何年か前、楽天が三菱UFJ証券に対し強い姿勢で対応したことが話題になったこともありましたが、あの時は強い姿勢に出る一年以上前から度重なる取材対応があったと聞いております。今回の件はどうだったのでしょう?

 弊社の場合、投資判断を付与して頂いているセルサイドアナリストが10名弱いらっしゃいます。彼らの多くは毎四半期決算ごとに弊社業績及び将来性についてレポートを執筆してくれているようです(執筆したレポートを事業会社に送ってくれるアナリストは3名しかいないので、正しいカバレッジ状況、レポート執筆状況は分かりませんが・・・送ってこない人は内容に自信がないのでしょうかね)。決算後のレビュー取材を経て詳細に弊社の状況を外部に伝えて下さるアナリストも3名程いらっしゃいます。この方々は、決算発表日夕方に開催するアナリスト・ミーティングに出席し、その日中に速報レポートを執筆し、翌日以降幕張までお越し頂き建設的な対話を重ねた上で決算レポートを改めて執筆してくれています。本当に感謝です。一方、説明会に出席するだけでチャッチャとレポートを書いている方々が存在するのも事実です。弊社では、数年前某ゲーム会社の偉い人に「取材しなくても分かる開示しなきゃ駄目だよ、GOちゃん」と言われて以来、短信、ホームページでの開示を充実させてきたので、正直取材しなくてもレポートが書ける状態にはなっています。とは言え「建設的な対話」を望む声が高まっている中、取材ゼロで弊社の将来性を語られるのは正直気持ち良くないですし、その話を聞かされる投資家にも失礼だと思いませんか?なので、私は機関投資家には、「○○アナリストは取材には来ていません!キリッ」と伝えるようにしています。

 ところでIRは誰に対してやるべきなのでしょうか。そして、どのように対応すべきでしょうか。IRにはDebt IRとEquity IRがあります。前者は当然の如くお金を貸してくれている人たちに行うものです。無借金経営の弊社でも銀行との関係性は大切にしています。負債比率が高い企業の場合、株式市場に優先してコンタクトしているかも知れませんね。Equity IRに関連してくる人たちも多彩です。上場前から投資してくれているエンジェルやベンチャーキャピタル、上場後に投資して頂いた機関投資家、個人投資家が主な登場人物でしょうか。そして、この多様な投資家との橋渡しになるのが証券会社だったり、IR支援会社ということになります。証券会社の中には、セルサイドアナリストもいれば、ファイナンスを手助けする投資銀行部隊もいます。経営者の資産管理の手助けをするプライベートバンク部門を傘下に持つ証券会社もあります。
その多くがIR担当部署をめがけてやってきますが、セルサイドアナリスト及び機関投資家に対しては、フェアディスクロージャーを大前提にお付き合いする義務があります。好き嫌いで選ぶことは出来ません。その時点で嫌悪感があるのであれば、さっさと上場廃止した方が良いかも知れませんね。
 
 投資銀行の担当者も含め、IR担当者はどのように対応し、どのように時間を割けば良いのでしょうか?私はいつも彼らがどこから収益を得ているかを考え、その立ち位置からどれだけ弊社のプラスになる情報を獲得できるかを重視するようにしています。資本主義の企業であれば、日銭を稼がせてくれる人を大切にするのは当然ですよね。例えばセルサイド。彼らはバイサイドに情報提供することで手数料を得ています。一方、バイサイドの収益は運用成績に相当依存します。投資銀行部門であれば、ファイナンスを実行することで手数料を得ます。そして収益を上げるために様々な人々が弊社にアプローチしてきます。時間に限りがありますので、弊社としても弊社に学びを与えてくれる方に極力時間を割きたいと考えます(繰り返しになりますが、フェアディスクージャーは守ります)。ポジティブなことだけではなく、厳しいこともはっきりと伝えてくれる方と会うことが、弊社の将来価値を高めることに繋がると信じています。

 投資家の気が付いていない良いこと、悪いことをインフルエンスしてくれるのがセルサイドアナリストだと思っています。エンロン事件前はセルサイドアナリストもファイナンスの実行によって収益を得ることができましたので、ポジショントークもそれなりにあったと思います。しかし、今はそれを表面上評価することが難しいでしょうから、株式価値の将来性にフォーカスしてアナライズし、それをインフルエンスすることで生業を立てているはずです。では、事業会社にとってはどんな存在であるべきなのでしょうか?個人的には優秀なアナリスト=無報酬のコンサルタント(アウトサイダーとして適切な意見を聞けると言う意味で)だと思っています。しかも中立な立場で語れる稀有な存在ではないでしょうか。株式価値を高めるための方策、もしくは株式価値の希薄を最小限に抑える方策を教えてくれる存在だと思います。優秀なアナリストから得るものは非常に大きいと常日頃思っています。見分け方?簡単です。世の中ギブ・アンド・テイクと良く言いますが、最近の市場関係者の多くはテイク・アンド・テイクの方ばかりです。優秀な方は利他的というか近江商人的というか、本当にうまくギブ・アンド・ギブとギブ・アンド・テイクを使いこなしています。IR担当者であれば、一度会えば分かってしまうと思います。

 ではセルサイドアナリストにどう対応すべきか?弊社を高く評価しようとしている人もいれば、ネガティブな要素を探している人もいます。単に他社をリサーチするために、弊社を取材する人だっています。しかし、ここは色眼鏡で見ず、フェアディスクロージャーを貫く必要があります。ルールです。難しいのは弊社及び業界に対する知識レベルが均一でない中、全てに同じ内容を開示すべきか否かという点です。幼稚園児から大学院レベルまでに同じことを教えることは至難の技ですよね。そして、人によって気付きのポイントも異なると思うのですが、最小公倍数で皆に「他の投資家はこんなことを聞いてきて、こんな風に我々は回答しています」と言うべきか否かも難しい問題です。本当にそれがマストになるのであれば、事業会社としては受動的なIRを全て停止し、能動的なIRのみで対応すべきなのかも知れませんね。但し、与えるだけのIRは日本の教育方法と一緒で、発展性があるとは思えませんが。

 タイトル「IRの本質」から外れたことばかりを書いているようですが、まとめると「接する人が何を求めているかをしっかりと見極め、その人の要求に応えつつ、自社の株式価値を高めるための適切且つ重みのあるアドバイスを与えてくれるファンを作っていく」ことがIRの目指すべき姿だということです。セルサイドアナリストの皆さん、自らの仕事を斜陽産業と蔑むのではなく、上を向いて頑張りましょう!上を向けない方は、上を向ける仕事を探しましょう!