GO斉藤のIR背負い投げ

GO齋藤のIR背負い投げ Vol.24「プレビュー取材・・・」

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 先日から日本経済新聞でレオス・キャピタルワークス社長兼最高投資責任者の藤野氏が連載を始められましたが、皆様はお読みになりましたか?まだの方は是非ご一読下さい。その記事の中で株価形成について興味深いことが書かれていました。それは、「『株価はついている限り正しい』と『株価は常に間違っている』という矛盾した内容を理解すべし」というものです。この言葉は投資する人だけでなく、IRに従事する人もしっかりと理解すべきキーワードだと思います。このことを理解した上で自社の状況を適切に市場に伝える努力をすることが正しいバリュエーション形成に繋がっていくのではないでしょうか。

 今までにない真面目な前置きになってしまいましたが、皆様いかがお過ごしでしょうか?我々はというと、1月末に第3四半期の決算を開示したのも束の間、あっという間に第4四半期末を迎えそうです。多くのアナリスト、ファンドマネージャーの方々が第3四半期レビューを取材してくださいました。この場をお借りして御礼申し上げます。今回良く聞かれたことは「通期会社計画は達成できるのか?」「暖冬だったにも関わらず成長モメンタムが加速した背景は?」「来期はどの程度の成長を見込んでいるのか?」の3点でした。
 まず「通期会社計画は達成できるのか?」についてですが、会社計画を修正していない以上、達成に向けて全社一丸となって取り組んでいますとしか答えようがありません。頑張ります。
 成長モメンタム加速の背景ですが、春から取り組んできた細かい取り組みの積み上げが顕在化してきました。多くの方は「とくに何が効果的でした?」と聞いてきます。決算説明会でもご報告の通りCRM戦略の変更と効果的なプロモーションの実施が大きかったです。
 来期の見通しについてですが、まさに社内で議論している最中であり、お話できることは何もないというのが正直なところです。長期での経営目標である商品取扱高5,000億円、営業利益500億円の達成に向けて経営戦略を練っていますが、それを中期にブレイクダウンしていないため、対外的にお話できることがなくて・・・アナリストの方々は限られた情報を基に3期間の予想を作成する訳ですから、大変ですよね。

 ところで金融庁では活動の一環として金融審議会の中で様々な事項について話し合いをしていることを皆様はご存知ですか?金融グループを巡る制度のあり方であったり、投資運用や決済業務等の高度化に関するものだったり、かなり広範な領域についてワーキング・グループなどを通じて議論・提案をしていらっしゃいます。
IRに関する領域としては「ディスクロージャーワーキング・グループ」があり、2016年2月19日に第3回会合が開催されました。まだ議事録がアップロードされていないのですが、マスコミ報道を見る限り事業会社としては困惑せざるを得ないことが議論されていたようです。
事務局説明資料によると、「金融商品取引法・会社法・取引所規則による開示の内容の整理」、「非財務情報の開示の充実、法定開示と任意開示の役割分担」、「フェア・ディスクロージャー・ルール」等が論点として挙げられています。IR担当として気になる細目は、「決算短信はもっと速報性を強め、記載を要請する事項をサマリー情報、経営成績等の概況、連結財務諸表及び注記に限定し、その他は企業が任意に記載できるようにする」、「ESG情報をはじめとする非財務情報の開示の充実」、「情報の選択的な開示についてルールを検討すべきではないか」でしょうか。今後の議論の行方に注目しています。
とくに最後の「情報の選択的な開示」・・・気になりますね。資料上には「セルサイド・アナリストが公表前の四半期業績に関する情報を提供していた」とか、「一部報道機関が決算発表前に公表数値に近い業績予想を頻繁に提供している」といったことが指摘されています。

セルサイド・アナリストの問題については、2015年12月15日に金融庁が発表した「ドイツ証券株式会社に対する行政処分について」が関連しているようですね。その報道によると、「法人関係情報の管理に不備があり、その法人関係情報を提供した勧誘を行っている。この点について法令違反の事実が認められたので、証券取引等監視委員会が行政処分を求める勧告を行った。この勧告を受けて金融庁は金融商品取引法第51条の規定に基づき行政処分を行いました。」と記されています。
ではそのまま証券取引等監視委員会の発表を見てみましょう。ドイツ証券に在籍するアナリスト(いわゆるセルサイドアナリスト)が担当する上場会社の非公表情報を取得し、その情報が法人関係情報に該当するかどうかの検討もせず顧客(この場合は機関投資家ですね)に提供されたということです。アナリストが直接顧客に伝えたり、営業を介して当該株式の売買を勧誘したりしたそうです。このように書くと、「非公表情報に基づいて売買するなんて駄目に決まってんじゃん!」という意見が飛び交いそうですね。確かにそうです。ただ難しいのは「何をもって非公表情報と考えるのか?」の判断です。これは駄目、これは伝えても良い、という指針でもあれば楽なのですが、非常にグレーなゾーンが多く、保守的に守ろうと思ったら、取材自体イリーガルなものになりそうな勢いです。普段の取材対応でも「足下どうですか?」は必ず聞かれます。この質疑に基づき、アナリストが進捗具合をレポートに書くことなく、直接・間接的に顧客に伝えたら駄目という認識で良いのでしょうか?しかし、その進捗具合が株価に影響を与えるか否か、誰が判断するのでしょうか?業績予想に対する修正基準に抵触するような変化であれば、誰もが非公開情報と認識するでしょうが、その基準に抵触しない範囲内での変動の場合はどう考えれば良いのでしょうか?

日本証券業協会でもこの点を問題視しているのか、「自主規制規則の改善等に関する検討ワーキング・グループ」において議論していらっしゃるようです。その中では、「未公表の情報については、それが重要情報に該当する場合もしくは公表済みレポートに影響を与える内容の場合は、当該情報を踏まえた新たなレポートを公表するまで特定の顧客に伝達しちゃ駄目」といったことを軸に整理が進められているようです。
しかし、どこを見渡しても事業会社がIRを行う上で何に気をつければ良いのか?に関する情報は見当たりません。どうすれば良いのでしょうか?レビュー取材は良いけど、プレビュー取材は駄目という話も聞きますが、ではいつまでがレビューでいつからがプレビュー????個別に提供された数値、情報は公表済みのレポートに影響を与えないものなら問題ないとのことですが、事業会社にはそんなこと分かりません(多くのアナリストが執筆したレポートを事業会社に見せませんからね)。レポートを執筆しないバイサイドにはどのように対応したら良いのでしょうか?取材に基づきすぐに当該株式の売買ができるという意味では、取材に来た投資家に数値・情報を提供すること自体危険な香りがしてきますが、規制される気配はありません。肝となる部分の明確な区分けはなく、関係当局に問い合わせても、答えは教えてくれません。どなたか事業会社に明確な線引きをして下さい!保守的に動くのであれば、取材対応は止める一方、非公開情報を極力なくすべく情報開示を能動的に行うほかないのかなと思います。実際、当社の決算短信は他社と比較して相当充実していると自負しています。しかし、こんなことをしたら「積極的IR姿勢の後退」、「建設的な対話の拒否」などと言われることでしょう。

ただ、早耳情報への傾注から本当の意味での建設的な対話にシフトが起きるのであれば、IR担当者のみならず、関連当事者全員が望む健全な株式市場の育成に繋がっていくようにも思います。否定しているだけではつまらないので、皆が前向きにアクションすることで、日本株式市場を活性化させていきたいですね。